令和6年11月11日に京都市で発表のあった指定取り消しに関する考察について

がくあじさい 障害福祉サービス

施設外就労の要件の確認について

令和6年11月11日に京都市で発表のあった就労継続支援B型事業所の取り消しについて初心者的学習者として事由を考察します。

今回も合同会社でした

関東では事業所の運営主体はNPO法人が多いと思うのですが、関西では合同会社が多いのでしょうか。
今回の報道発表は京都市が行っています。
通常事業所の指定は都道府県の範囲ですが、政令市と中核市については権限がその自治体となっています。通常の取り消しでは、取り消す元が都道府県、自立支援給付費の返還作業を行うのが市町村ですが、政令市などの場合には取り消し処分を行いつつ、返還請求も行うという、二重の手続きが必要になります。したがって、都道府県よりも政令市などのほうが一件の事務負担は大きくなるのです。
もっとも、利用者が複数の自治体にまたがるのはよくある話で、その場合処分する政令市などは、取り消し処分と当該市の自立支援給付費に加え、関係する自治体に連絡し、場合によっては調整会議を実施して返還作業を行わなくてはいけません。

返還した自立支援給付費の返納先

そもそも自立支援給付費は当該の市町村は二分の一、残りを国と都道府県から半々ずつ支出されます。ただし、請求にかかわる審査は国保連を経由して当該市町村のみが行います。

返還が生じた場合には、実際に返還されたかどうかにかかわらず、支出が無効だったわけですから、市町村は国及び県に返還調整しなくてはいけません。もし、回収できなかった場合には全額市町村の持ち出しになります。
大阪とか京都とか大きな市町村ならばその負担に耐えられますが、例えば辺鄙な人口規模の小さい町などの場合、仮に何百万の返還金が出た場合、回収できないと経理上大きな問題となります。
不正と認定したら、回収できなくても持ち出しで国や都道府県に返さなくてはいけなくて、国は頑張って指導しろと言っても、無理があるんじゃねーの?と思います。パラドックスみたいで、頑張って不正と認定したら経理が圧迫されんじゃやんねーよ、となりませんか?

今回の返還額は6000万近く

今回の返還額のうち、不正認定分は4000万でした。でかいですね。これに40%の加算金がついて6000万近くになります。これ、全部回収できれば京都市は収入になりますが、回収できないと半分2000万は国などへの返還で歳入から消えていきます。大きい自治体でないと大変ですね。

なお、返還金の性質は地方自治法に規定のある強制徴収公債権だと思われます。言ってみれば税金と同じですが、効力は通常法人財産までしか及びません。なので、5年で時効になっちゃうし、破算されたら欠損処理するしかないのかな。またこの金額では市長の専決で債権放棄できないので、回収できないと5年持ち続けなくてはいけないわけです。まー京都市は大変だと思います。
頑張って不正と認定したら自治体の損失が大きくなるのはなんかおかしい仕組みです。違ってたらごめんなさい。

こんなに不正と認定された額が大きいのになぜか欠格事由該当者がいません。
欠格事由とは、取り消しに伴う人的措置で、法人代表などは5年間福祉事業への従事が禁止されるものです。通常取り消しに付随して欠格事由がつけられますが、どういう背景で今回はつかなかったのでしょうか。

取り消し事由は不正請求と要件外の施設外就労

虚偽報告や運営基準違反、特に前者が取り消しにつながる原因であることはありますが、事由としては
・営業していない日の請求
・施設外就労先が廃業していたのに請求し続けたり、支援員の支援がなかったり
でした。

この中で施設外就労については「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」のなかで、「施設外就労先の企業とは、請負作業に関する契約を締結」とあるので、そもそも廃業していたら契約も結べないでしょう。また、施設外に出た利用者と同数をさらに事業所で受け入れることができるので、、例えば定員20名の事業所で上限20名が施設外に出れたら、さらに20名合計40名が利用者になります。そのためには支援員も報酬算定上必要な人数揃えなくてはいけないので、施設外就労先で支援のできる人数の支援員がいなかったのでしょうか。また利用者総数が定員の倍まで増えることから、4000万という高額な不正認定につながった理由の一つとも思えます。

施設外就労は要件の確認が重要

施設外就労を行う場合には前記留意事項に従った運用が必要と思います。特に施設外就労先の支援員の数、事業所での支援員の数には注意が必要と思われます。

なお、この留意事項通知ですが、令和7年3月31日に改正されていまして、就労選択支援を前提とした記載が追加されていますので、興味のある方は、厚生労働省が出している「修正前後版」をご覧ください。

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