就労事業会計の難しさ
古い話ですが、令和4年11月1日に旭川市が発表した効力一部停止について、初学者として考察してみます。
旭川市、むかーし行ったことがあります。北海道の真ん中で、深川の隣だったか、今は亡き深名線で朱鞠内に行ったときに、一泊した覚えがあります。当時はJR線の廃止も一段落したところで、のんびりとディーゼルカーに乗りました。6月なので、線路脇一面に赤いふきが自生していました。
旭川市も指定権者ということは、中核市なんですね。規模的に職員の方は大変でしょう。特に令和に入ってからは新型コロナ感染症等もあり、いろいろ要件が変わってきていました。
新型コロナの時期には就労事業会計にもいろいろ通知がありました。例えば就労継続支援B型であれば、報酬の基準となる平均工賃も平成30年のものや、令和元年のものが使えました。また、一時的に収益が生じない場合には、訓練給付費から工賃を払ってもしょうがないよ、といった扱いもありました。
今回の処分は令和4年
今回の処分は令和4年11月ですから、令和5年5月の新型コロナウィルス感染症の扱いについて流行前の状態に戻すという通知以前のもので、比較的緩やかで、そんなに実地指導もできていなかったであろう時期の処分になります。
処分の内容は3か月の新規利用者の受け入れ停止でした。
大体新規利用者って、8月の体験を踏まえて養護学校から翌4月入所でしょうから、11月から1月までの3か月間って、ほとんど新しい方は入らない時期じゃないでしょうか。
つまりあまり重い処分ではないということです。
内容も個別支援計画未作成の減算を取らなかったことや、要件を満たさない欠席時対応加算、施設外就労加算などで、過誤返還で済む可能性もある状況です。
ただ、運営基準違反として、就労事業会計で、「工賃として支払うべきものが適切に支払われているか確認できない」という部分があります。
工賃の支払い方法の考察
具体的内容として指摘されているものに、①前年度の収支が繰越金と一致しない②パート職員の給与を就労会計から負担するにあたり、就労会計から施設会計へ支出し、施設会計から職員へ支出していたが、就労会計の収入が減少したため、施設会計から負担するようになった。「明確な基準のないまま就労会計の支出が低減」③就労会計の収入が減っているにもかかわらず、就労会計に繰越金が生じている④就労会計について工賃が払えなくなった際、持続化給付金や借入金を収入として計上⑤寄付金と借入金は、帳簿処理をせずに特定の口座に一時的に一括入金し、必要に応じて施設会計と就労会計に支出(一部省略)があります。
厚生労働省から「就労事業会計の運用ガイドライン」が出されており、その中に繰越金の考えがあります。このうち工賃支払いの繰越金の考えで、収支と一致しない部分があったということでしょう。ただ、パート職員の給与を就労会計から払っていたと書いてありますが、そもそもこれ自体の考え方が疑問です。
事業所として本来備えるべき支援員等の給与は施設会計から支払うべきで、就労会計から支払われる給与(労務費)は例えばよく言われる例で、生産活動で喫茶店をやる場合の「コーヒーのバリスタ」など支援を行わずに専ら生産活動のみを行う場合が該当するはずです。旭川市の指摘内容には「明確な基準のないまま就労会計の支出が低減」とありましたが、そもそも明確な基準はガイドラインに示されているので、そこに適合したかどうかを示すべきだったような気がします。ただガイドラインにも「按分していいよ」的な記載があり、按分の基準が示されなかったということなのかもしれません。
今回の処分はほかの減算を適用しなかったものも含めて、3か月の新規受け入れ停止だったことからも、それほど大きなものではなかった気がします。また、不正と認定した場合、加算金を含めた額を請求するのですが、今回は掲載がなかったので、あるいは「過誤対応による返還」のみだったのかもしれません。